小さな恋のメロディ。

ぼろぼろになっていた腕時計のバンドを変えた。
7年くらい前、まりるからもらったものである。
無善寺で、クリスマスの予定なんてあるわけないだろ〜!!と酔っ払って叫んでいたら、
「じゃあ、じゅんじゅん俺とデートしてよ。」
と言われ、なにそれウケるいいよという流れに。
イルミネーションとか観に行っちゃおうぜと日比谷ミッドタウンへ。
まりるは事前にどこのイルミネーションがよいだろうかと、万年床わたなべ氏に相談してくれていたという。
なぜそこでわたなべ氏なのだろうかと一瞬思ったが、彼はとてもロマンチストであるし、まりるとわたなべ氏はなかよしだし、ふたりでデートプランを練る姿を想像したら、なんだかすごくほっこりした。
プレゼント交換は必須でしょと、お互いにプレゼントを持ち寄ることに。

クリスマス当日、人気スポットだけに混雑しているよなと思いきや、思いの外混み合っておらず、ほどよい人出だった。
イルミネーションはとても綺麗で、なんというか、心が洗われた。
私はクリスマスが大好きで、恋人がいないからと他者を妬んだり、クリスマス自体を疎む気持ちは、生まれてこの方抱いたことがない。
幸せそうなひとたちを見るとほんわかうれしい気持ちになるし、クリスマスソングを聴きながら、ひとりでケーキやチキンを作るのもすごくたのしい。
たのしくて、丸鶏のローストチキンとか作っちゃう。
普段から基本、自分からだれかを誘うということがないので、誘われなければ単独行動の人間である。
この年のクリスマスは本当に稀有であった。
ミッドタウンのベンチに座って、まりるとプレゼント交換をする。
プレゼントとは別に、まりるがお花をくれた。
さすがは、自他とも認めるキザキャラ。
まりると出会ったのは無善寺に出るよりもはるか昔で、身の回りでは最古の音楽仲間かもしれない。
一挙一動が絵に描いたようにナルシスト全開で、出会った頃から変わらずスベり空回るその姿に、安心感さえ覚える。
私は、お酒があんまり呑めないまりるに、3%のブルーベリービールをプレゼントした。
酒が呑めない人間に、度数は低いにしても酒をプレゼントするって、後から思い返せばすごく思いやりに欠けていたとおもう。
それでもまりるは、ありがとうと笑顔で受け取ってくれた。
いいやつ。
まりるのプレゼントは、私の大好きなリラックマのマスコットキーホルダーなどを詰め合わせたものだった。
その中に、この腕時計が入っていた。
にゃーの両手が短針と長針になっていて、とてもかわいい。
すぐに右手首に腕時計をつける。
美術大学受験の予備校時代、時間制限内で絵を仕上げなくてはならなかった為、絵筆を走らせながら確認出来るよう右側につけていた。
その名残で、今でも腕時計は右手首に巻く。
イルミネーションを眺めながら心穏やかな時間を過ごしたのち、寒いしどこかでなにか食べようかという話しに。
私はお酒が呑みたいなあという旨を遠回しに伝えたところ、快く受け入れてくれ、居酒屋へ。
本当にいいやつ。
まりるはお酒は呑まないが、煙草をたくさん吸う。
私は煙草を吸わないが、煙草の香りはわりと好きなので問題なかった。
ビールをがぶがぶ呑みながら、雑談とも議論ともいえないあれこれを話していたはずだったが、気付いたら、テーブルにおでこから突っ込んで爆睡していた。
クリスマスデートの最中に、一方的に呑んだくれて爆睡するなんて。
我ながらひどすぎる。
まりるは、そんな私を無理やり起こすこともせず見守ってくれ、起きたあとに叱ったり怒ったりもしなかった。
気をつけて帰るんだよと頭をぽんぽんされ、秋葉原駅でばいばいした。
どこまでもキザで紳士でいいやつ、それがまりる。
あのとき貰った腕時計は、数回電池を換え、今回ベルトを換え、いまに至る。
去年のじゅんじゅん生誕祭に遊びに来たまりると戯れるじゅんじゅん。
大の大人だが、動物か園児のよう。
多分、何年たっても、いくつになっても、前世も来世もこんな塩梅なのだろうなと漠然とおもう。
世の中で呼称される関係性のどこかに属さなければ、当てはまらなければと思いがちだが、その実、人と人との関係というのは、そのひとつに収まらなかったりもする。
親友とか恋人といった関係性に合わせてこなすべき内容をスタンプラリーのように遂行したこともあったが(前述のような、呼称出来得る関係性を求める人がしたがる傾向にある。下の名前で呼び合う、敬語をやめるなど、近しい関係であるはならばこうあるべきという項目や基準がその人の中にあるらしい。)、なんだかチグハグでうまくいかなくなったり、関係が崩れてしまうことが多くあった。
恋人や結婚のレールに乗ることを否定しているわけではないし、契りの持つ安寧の利点なども承知している。
ただ、そのどれを選択するのか、どれを好ましいとするのかは、その人次第であるのだとおもう。

私は、「愛している」と言われると、たとえそれが100年の恋であっても冷めてしまうという特殊な仕様を持っている。
そのため、恋仲として深く在りたい人には早めに説明するようにしている。
しかしながら一定数、私からの振りだと思っているのか、俺の愛で覆してやるぜなのかなんなのか、敢えてその呪文を唱えて屍となっていった者どもが多数いる。
今振り返ると、その言葉を発した事よりも、"目の前の相手の意思を尊重しない行動に出る人種"という意味でシャッターを下ろしたのだろうなと思う。
恋人ならば愛していると言い合うべきだというのであれば、私は喜んで配役を降りる。
条件先行であるならば、アルバイト募集同様、見合う相手を探して選べばよいとおもう。
冷めていると言われればそれまでだが、私は、背伸びや無理をしてまで、"恋人ごっこ"をしたい人間ではない。
君の形、僕の形、重ねてはみ出したものを、どちらかが切り捨てるのではなく、分かりあうことが対人の要なのだとおもう。

ロミオとジュリエットに、"ああロミオ、あなたはどうしてロミオなの?"という名台詞がある。
敵対する家柄同士恋に落ちてしまったことを、ジュリエットが嘆き訴えるシーンだ。
私はその後に続く、
「例えば薔薇の名前が違っても、その花の芳しい香りに変わりはないはず。ああロミオ、別の名前になって下さいまし。」
という台詞が、大好きだ。
肝心なのは、中身の肌ざわりや色合いやぬくもりで、それらが満ちたとき、初めて関係に名前がついたり、つかなかったりするのだとおもう。
後者は、関係性に名前がなくても存在することが可能であるという、一種の救いであるとも思う。
川本真琴氏の『1/2』に、
「唇と唇 瞳と瞳と 手と手
神様は何も禁止なんかしていない
愛してる 愛してる 愛してる」
という歌詞があるのだが、なんというか、男女や人間同士をも超えたとてつもない博愛を感じる。
仏教でいう大日如来とは、"宇宙そのもの"だとされる。
この宇宙のすべてが大日如来であり、あなたも私も雑草もあんぱんも、排水溝の髪の毛も太陽も、大日如来。
存在している時点で赦されていると読み解くとすれば、ものすごいことである。
それは、目に見えない関係性にも該当する話なのだと私は思う。
自ずと然るべきと書いて自然であるのだから、当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、私にとっては、目から鱗であった。
まだまだ、視野を拡げるのびしろは、果てしない。
じんくんのnoteを読んだ。
じんくんも、まりると同じくらいにライブハウスで出会った音楽友達。
私の20歳のお誕生日祝いの席にじんくんもいたから、相当昔からの仲である。
じんくんとじんくんのおかあさんやお友達とベンジーのライブに行ったりもした。
とはいえ随分ご無沙汰していて、今はSNSで繋がっているくらい。
本当に偶然、ふと見てみたら、私が前述した、最近考えているようなことが綴られていたのでびっくりした。
この文章の中に、
『僕にとって特別な人とは、特別に感じる人が唯一なのではなく、特別に感じる人が複数いるのでもない。僕は複数の特別があると感じる。
朝は朝で特別で夜は夜で特別。それぞれの関係がそれぞれに特別だ。』
とあって、心底合点がいった。
じんくんはとてもよい文章を書く人なので、目にしていて心地がよい。
久しぶりにふと開いてみて、よかった。
あの時のあの人も、これから出会うあなたも、みんなみんな、健やかに過ごしていてくれたらいい。


昨日、職場で39度の熱を叩き出し、早退したその足で病院へ。
コロナとインフルの検査しときましょうと鼻の奥をぐりぐりされ、待合室で結果を待つ。
診察室に呼ばれると、先生が、
「はい!しっかりはっきりバッチリA型ね!!」
と、検査キットの盤面を紋所のように見せてきた。
たしかに、Aのところに濃い線が出ている。
結果申告が軽快すぎてちょっとおもしろくて、難病とかになったらこの先生におしえてほしいなとおもった。
年内は安静にしてくださいと言われ、明日から大晦日までということかと認識し、現実に引き戻され、あわてる。
先生の軽快さに一瞬でももっていかれていたのか。
やっぱり病は気からなのだな。
しかしながら、陽性は陽性なんである。
処方して戴いたお薬をにぎりしめたまま、無善寺のマスター無善菩薩に電話をかけ、事情をお話しする。
29日の神の計画企画は、前回優城貴子さんがインフルエンザで不在だったため、同じメンツでやりましょうという流れだったのだ。
皮肉にも、今度はじゅんじゅんがインフルに。
永久に全員揃わないのでは。
神の計画陰謀論か何かだろうか。
29から31のラスト3日間を担っていたのにすみませんと平謝る私に、笑いながらまあしょうがないよねと返してくれた。
2024年無善寺営業初日がレギュラーのアイドルの日なので、しっかりやすんで、英気200%で挑みたい。
そんなわけで、明日から大晦日まで、じゅんじゅんの出演はありませんが、とってもたのしい無善寺に是非是非あそびにいらしてください。
カウントダウンライブには、テルさんが代打出演してくださいます。
テルさん、本当に、ありがとう、ありがとう。
たくさんたべて、たくさんねむって、はやくげんきになるんだ。
皆様も、お身体にお気をつけて過ごされますよう。

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