うそつきは泥棒のはじまりだ。
嘘つきは泥棒のはじまりだ。
私は、たくさんの人の気持ちを泥棒したんだな、と思った。
ちゃんとしなくちゃ、の、"ちゃんと"、の基準が、自分の中に見当たらない。
他人や世間の中に答えを求め、闇雲に探っては、さらにわからなくなり、狼狽してばかり。
そんな1ヶ月半。
お仕事を始めて、3ヶ月。
環境の変化などの精神的ストレスは3ヶ月程遅れてくるというし、新しく"春バテ"なんていう言葉も聞くので、その部類なのかもしれない。
久しぶりに、脳みその皮を剥かれた感覚を覚えた。
空気が触れるだけで、すごく痛いあれだ。
NOと言えない自分がまた頭をもたげて身体支配きて、中学時代にカウンセラーの先生から言われた言葉を思い出す。
「NOじゃなくても、NOって言いなさい。あなた、いまから練習しておかないと、後々、大変なことになるわよ。」
去年の秋くらいから怖い物なしだった。
その自分が、すこしずつ、すこしずつ、まるで角砂糖がコーヒーの液体を吸い込んで崩れていくかのように、足元から、ひとつずつ、沈んでいく。
小学生の頃から感じていた、
「どうしよう。」
という、漠然とした不安感。
人の目や気持ちが、たとえそれが優しさや好意であっても、ヒリヒリと痛くて、こわい。
私はそれに耐え得る素質があるのか。
そうでなければ、どう罰を受ければよいのか。
昔々から抱えていた、罰を受けなければ、という漠然とした焦りの正体が、ほんのすこし見えた。
ただ、いまの自分には対処する気力も、判断する余裕も、ない。
後ろ向きなこと、恐怖心や失敗は、頭に浮かべず、無視することで自分の中に存在させずに消失させていけるし、また逆もしかり、という原則がわかっていながら、これがどうして。
なにもかもに、自信がない。
自己肯定が、できない。
気を抜くと、ごめんなさい、すみません、で頭がいっぱいになる。
末期の頃よりは軽度だが、その方向に向かっていることは明白だった。
心の揺らぎは天気同様日々変わるが、もっと根本的な恐怖心に関しては、システムを改善しなければ悪化してしまう。
生活リズムや食の乱れも、大きく関係しているのだろう。
ただただ、黙々と眠ることにして時間をやり過ごした。
眠気がまったくなくなっても、布団にくるまって目を閉じる。
自分が大きな蛹になったような心地がした。
ちょっと背伸びをすればできる事柄を、一度にたくさん請け負い過ぎてしまった。
まずは、あたらしい事柄にNOと返した。
今ある、負担となってしまった事柄を、ひとつずつあきらめることにした。
今更引っ込みがつかないし、ここまできて申し訳ないからという気持ちでがんじがらめのまま、重たい歩みを進めてしまっていた。
暴動を続ける某国の主のようだ、と思った。
そこに自分の本意があるのかと自問するたびに、誰かの為だから、という言い訳が浮かんできた。
誰かの為だと言いながら、誰かの所為にしている自分が、心底気持ち悪かった。
私は嘘をつくのがとてもうまい。
大丈夫です、と笑うのがうまい。
つらいときに大丈夫ですと笑うのは、嘘つきだ。
周りはみんな自分の嘘に騙された人々だというのに、
「気付いて欲しかった。」
なんて、被害者のような感覚を抱いたりする。
オオカミ少年の童話を思い出した。
人間万事塞翁が馬。
すべてがよくない方へ覆っていく感覚。
歯車が、はまらないまま滑り続けて、心が削れていく。
生きていてよいのかわからないと思ったとき、
「これは病気のしわざかもしれないな。」
と初めて思った。
心療内科にかかるべきかと検索してみたが、まずはこの2年程で得た方法を用いて対処してみようと思った。
昨日、あきらめよう、と決断してからは、すこし心が楽になれた。
一昨日、お店の宣伝のために看板横に立っていた。
突然大雨が降って、目の前の信号は一瞬で水浸しに。
暖かで春らしい日だったが、気温がじわじわと下がっていくのがわかった。
あわてて駅へと走る人々を眺めながら、コートのジッパーをしめる。
外に立っていた同じビルのスタッフさんが、
「好きじゃなかったらごめんね。」
と、ホットの缶コーヒーを買ってきて下さった。
一回もお話したことがないので面食らい、小さい声で、ありがとうございますと返した。
微糖の缶コーヒーを両手で包んで、なんだかすごく嬉しい気持ちになった。
人の優しさで、心は息を吹き返すのか、と改めて思った。
缶コーヒーを手にニヤニヤしていたら、通り掛かりの方が声を掛けて下さり、そのままお店にご案内した。
喜びは連鎖するのだ、と、何度目かの気付きに心が緩んだ。
取り越し苦労の嘘つきは、なるべくしないでいたいと思った。
その方が、ちゃんとめぐるし、きちんとひらけていく。
原因は数多に及ぶし、決めつければ澱んでいくだけだから、あまりこねくりまわさずに、忘れちゃうくらいが丁度良い。
昨日の服が、今日しっくりくるとは限らない。
嘘つきは、なるべくしないでいこうと思う。
昨日お客様から戴いた猫ちゃんケーキ。
お誕生日の先輩に買ってきて下さった。
私も便乗して、おひとつ。
かわいいし、とっても美味しかった。
お祝いの輪に加えてもらえて、すごく嬉しかった。
四六時中寝続けているような私でも、世界とつながれているのかもしれないと感じて、嬉しかった。
今日のライブで注文したケサディア。
戸塚LOPOは初めて出演するライブハウスで、対バンも初めましての方ばかりだからと緊張し、黒ラベルロング缶を手にリハへ向かった。
いざ始まってみれば、以前共演させて戴いた方や、私を知っていてくれた方も多くいた。
観に来て下さった方もいた。
またすこし、心のポンプが息を吹き返した。
私はとても、考えすぎる節がある。
ビールを呑んで、ぺろんぺろんくらいが、ちょうどいい。
やっぱり、不安とかこわいことより、しあわせのほうが喜ばしい。
無理矢理じゃなくて、すこしずつ。
それがたとえば、誰かをガッカリさせてしまっても。
たぶん、一生繰り返すんだろう。
だけれど。
だからこそ。
今一度、私を見誤るのはおしまいにしよう。
ありがとう。
おやすみなさい。
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