昔の記憶はタイムカプセルだ。

昨日の朝ごはん兼おひるごはん。
先日作った大根いわしカレーが残っていたので、焼きカレーにしました。
同じカレーでも、手を替え品を替えてゆけば、連日おんなじメニューで辟易するという一人暮らしあるあるも回避できるのです。
毎日おんなじでも、個人的には全然良いのですけれども。
ペンネがあったはずとお湯を沸かして探したところ、前回使い切っていたようで、スパゲティしかない。
あらまあ。
ごはんの冷凍ストックも、ちょうど食べ切ってしまっていた。
これは買い物に行ってくるしかないかと思ったが、いやいやここは有りものを駆使してワンディッシュこさえるのが、真の自炊の民でしょうと。
以前お料理番組で、スパゲティをキャンディー状に布にくるんで、両端を持って机の角などにゴリゴリ擦り付けると、細かいパスタの出来上がりという秘技がやっていた。
そこまで細かくなくてもいいかなと、三つ折りにして茹でてみた。
いけましたねえ。
焼きチーズカレーパスタ。
今回はホワイトソースも追加してみた。
カレーグラタン風ですね。
短くしたおかげで、カレーともチーズとも程よい具合にマッチして、食べやすかったです。
具材の大きさとお料理の温度は大切。
パスタの代わりに、ごはんやパンを敷いても美味。
レトルトカレーでもできるので、ちょっとリッチなおひるにしたい時、是非。
ホワイトソースは、レンジで簡単なこちらのレシピをどうぞ。
ちなみに我が家のレンジは強めなので、表記通りに作ったら二度目のレンチンで沸騰して溢れてしまいました。
様子を見ながらどうぞ。
今回は1人分なので半量で足りた。
便利なレシピさんだ。
年末にかけて呑む機会も増えると思い、一旦大型休肝日を設けることに。
年末に限らず、常日頃から呑んでいますけどね。
おかげさまで、お掃除やいろいろな作業が捗っています。
夜はなるべく、きちんと床に就きたいタイプ。
きちんとと言いつつ、路上であったり、こたつであったりはしますが、それはさて置き。
深夜から朝にかけての夜遊びというものに、あんまり魅力を感じないのである。
勿論、その場のノリで朝まで打ち上げをしたり、カラオケオールしたりはあるけれど、あらかじめ約束されたものとなると、あんまり乗り気がしない。
基本的にその場その場の自分で生きている人なのだと気付いてから、数年に一度あるかないかや年一の行事以外の約束は、オールに限らず、避けるようにしている。
精神的に厳しかった頃、止むを得ずではあるが、予定をたくさん飛ばしてしまい、自己嫌悪を拗らせた経験も加味しつつ。

アバウト10年前の、じゅんじゅんの自撮り。
20代前半の頃、オフ会で知り合った、やたらとシャンパンを嗜む女の子に連れられ、生まれて初めてクラブに行った。
ジャンルを問わず、音楽を聴きながら身体を動かすのが大好きだったので、前々からディスコに行ってみたいと憧れを抱いていた。
しかし調べてみると、ディスコの類いはほぼ絶滅しており、現在ではクラブがその位置に当たるようだった。
気になるけれども、糸口が見つからないままだったので、行ってみる?と声を掛けられた時はとても嬉しかった。
どんな格好で行けばいいのかと聞いたら、いつも通りで大丈夫と言われたので、サイケ柄でぴったりめのトップスにタイパンツにサンダルという出立ちで待ち合わせ場所へ。
暑くなり始めの初夏で、当時は楽だからという理由でアジアン系の服をよく着ていた。
彼女の友達だというバーテンの男の子も一緒に行くということで、3人で六本木のCOLORというクラブへ。
受付で身分証を見せて入場料を払う。
オールナイトのイベントでは、身分証が必須なのだとか。
フェスなどでよく使われる紙製のリストバンドをつけもらい、いざフロアへ。
バーカウンターでお酒を買ってしばし見学。
若い女の子が、キャッキャしながら、ダンスと呼ぶ程でもないリズムで、身体を揺らしている。
最高じゃん。
何杯か呑んだあと、いてもたってもいられなくなりフロアに突入。
ひとりだけ浮いたファッションだったけれど、周囲の人は全然気に留めておらず、温かく迎え入れるでもない平然とした空気がとても居心地良く感じられた。
ある程度放っておかれるくらいが、自由に過ごせて嬉しい性格のようだ。
東京の一見冷ややかな他人との距離感が、とても好き。
少々テンションが上がり過ぎて、お立ち台に上がり大はしゃぎする私。
一瞬、台の上の女の子達が引いていたけれど、最後にはハイタッチをして受け入れてくれた。
クラブというナンパスポットで、女の子同士が盛り上がってキラキラしているというのは、何物にも変え難い尊さがあるのだなと感慨深かった。
同調と予定調和しかない女子会などでは、駄目なのだ。
男性に声を掛けられ、ハイハイ、とあしらって、女子同士かたまって笑って過ごす、この空気感よ。
決して、男性を無碍にしているわけではない。
ただただ、女の子の可愛さと魅力が存分に花ひらく場所なのだなと感じた。

ひとしきり踊り終え、バーカウンターの方へ向かうと、突然肩に手を回された。
なんだなんだと思ったら、相当に泥酔した男性が、私にもたれ掛かるように密着してきていた。
呂律のまわらない口調で、
「自分は芸人をしていて、仲間とVIPルームにいるから来ないか。」
という旨の、いわゆるナンパをしてきた。
恐怖心などは一切無かったが、意思疎通が難しそうなのと、物理的に強引さをぶちかましてくる人が苦手なので、はあ、へえ、と、彼の口説き文句を聞き流していた。
ビール呑みてえなと思っていたら、後ろから、おまたせ、と声を掛けられた。
振り返ると、ブロンズの髪の外国人が、ハートランドの瓶ビールを両手に持って立っている。
それを目にした瞬間、それまでの泥酔具合が演技だったのではと思う勢いで、絡みついていた芸人さんが立ち去っていった。
勿論、初めて訪れたクラブで、外国人と知り合いな訳がない。
芸人さんがVIPルームへ撤退していくのを見届けたのち、大変だったねと私に瓶ビールを差し出してくれた。
ビールをご馳走してくれる人に、悪い人はいないと相場は決まっている。
彼はアレックスという名前で、生粋のアメリカ人だという。
見掛けは完全に外国人なのに、日本語が驚くほどうまい。
最初に声を掛けられた時は、視覚と聴覚の情報が一致せず、一瞬、何が起こったのかわからなかったくらいだ。
日本へは仕事で来ているそうで、私も知っている、かなり大手の会社に勤めていた。
さすがは天下の六本木。
瓶ビールを呑みながら、アレクとしばし談笑して楽しい時間を過ごした。

その日連絡先を交換して以来、六本木の色々なクラブへ連れて行ってもらった。
大きなイベントの際には、海外のモデルさんたちしか入れないVIPルームへ招き入れてくれたりもした。
英語がてんで話せず、ボディーランゲージが主な手段の私。
あまりご自分からコミニュケーションを取る必要のないモデルさん方とは上手く対話が出来ず、なんだか申し訳なかった。
めちゃくちゃに顔が小さく、どこで売っているんだろうという華やか且つタイトなドレスからは、すらりと長い脚が伸びている。
10頭身はあるのでは、というスタイル。
CGかお人形さんが動いているような錯覚に陥り、めちゃくちゃに緊張した。
かたや私はといえば、おかっぱ頭のちんちくりんで、どこか座敷童子っぽくもあった。
元々人と比べることはあまりしないが、さすがに目の前の光景が眩し過ぎ、私なんかがこんなところにいていいのかなあと弱音を吐くと、
「じゅんは、日本人の女の子には珍しい自由な発想を持っていて素晴らしいよ!見栄えだけの彼女たちより、よっぽど魅力的だよ。」
と、お世辞だとしても心強い言葉で元気付けてくれた。
深いような話もしたし、明け方の六本木の路上を駆け回ったりもした。
破茶滅茶だけれど、今思い返したら何物にも変え難い毎日だった。


アレクの話は前にも書いたかもしれない。
オールの話で、ふと思い出した。
私は過去を振り返り、あの頃はよかったよなあとため息を吐くタイプの自慰的感傷話が、とても嫌いだ。
少し別の話にはなるが、最近の心理学の実験結果で、過去のトラウマを口に出している人は、そうでない人よりもPTSD、心的外傷後ストレス障害になる可能性が高まるのだという。
その時の嫌な気持ちを口に出すことで、自分の今の心に上書きし、更新してしまうからだろうと言われている。
勿論、話すことで解放され、前を向けるならば話した方がいい。
そこは当人の傷の深さや性格によってまちまちなのだと思う。
その話を読んだ時、楽しい昔話も、今現在の現状と比較して、自分自身を貶めてしまう材料にするのは、実は危険な事なのではないかと感じた。
だから私は、逆のことをしてみようと思ったのだ。
過去の経験や出来事を、今の自分と比較することなく、楽しかったね、勉強になったじゃん、と、内容の楽しい苦しいに限らず上書き保存してしまえたら、心に抱えるストレスは驚くほど軽くなるのではないか。
まだ実験の最中で、これを誰にでも使える方程式にするのは難しいだろうけれど、まずは私が、あらゆる状況でなるべく身軽に動けるように。

認知症のセミナーで、
「若い頃の記憶は、きちんとその人の記憶の壺に入っているんです。だからボケてしまっても、昔の話は鮮明にお話出来るんですよ。」
というお話を聞いた。
忘れん坊将軍と自ら称する程の物覚えの悪い私だが、たしかに、今更はっと思い出すエピソードがあるたびにドキッとする。
その出来事の直後は忘れていたのに、今更克明に頭の中に浮かんでくるのだ。
あの頃アレクと六本木の道端で食べたケバブのことなんて、昨日まですっかり忘れていた。
人間、そんなものなのかもしれない。
忘れないと生きていけないし、全部覚えている必要もなくて。
なんだか、タイムカプセルのプレゼントみたいで嬉しいなと思った。
だから思い出す度に、あらゆる感動を飽きもせずに言葉に綴ろうと思う。
その時の私と今の私では、選ぶ言葉も感じ方も、きっと全然違っているのだろう。
お風呂場でシャワーを出したら突然熱いお湯が出て、わああ!と叫んですぐに笑ってしまった。
生きているな、と呟いた。

私の身体、今日も1日、ありがとう。

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