ネイルのはなし。

りなちゃんの舞台を観に行くという口実で、数年振りにマニキュアを塗った。
「スコーピオン」のMV撮影の際に、現場の美容師さんに塗って戴いたのが最後と思う。
化粧やおめかしの類いに疎い私だが、昔から絵を描いていたのもあり、マニキュアには比較的興味があった。
塗るのって楽しいよね。
楽しいだけで、上手いわけではない。
美大卒ではあるが、私はガソリンスタンドの店員さんのようなつなぎを着て、べちゃべちゃになりながら絵の具を捌くタイプだった。
終盤は筆すら億劫で、ペインティングナイフと呼ばれる壁を塗る時の小さいのみたいなやつでがつがつ描く始末。
定められた区画をはみ出さずに均一に塗るというのは、専門外どころか真逆の手法。
あれはデザイン科のおしゃんな人々が得意とするやつ。
私がやるとめっちゃはみ出るし、机やその辺にマニキュアの液がついてしまう。
でも楽しい。
楽しいはたのしいのだが、自分がネイルをするとなると、爪を覆われる違和感に耐えられず、そこまでハマることはなかった。
爪が口を塞がれているというか、皮膚呼吸出来ない感じがして、なんだかもぞもぞしてしまう。
付け爪は、本チャンの爪が一緒にもっていかれて剥がれそうで、怖い。
少しでも伸びるとすぐ爪を切らないと気が済まない深爪性な私には無理だった。
前職で禁止されていたのもあり、手を付ける事がなかったネイル。
買い物しているときふと目に止まり、そうだ、りなちゃんの舞台があるから、せっかくだし塗ってみようかなと。

久しぶりに塗ってみたマニキュアは、やはり少しはみ出してしまった。
それでも、乾き切る前に慎重にティッシュで拭ったり、薄めで2度塗りしたり、試行錯誤してなんとか綺麗にできた。
すごい。
不透明でビビッドな空色という、人体には有り得ない色が、爪の先に並んでいる。
この色のカエルがいたら、絶対猛毒を持っているだろうという色合い。
もしくは、セーラーマーキュリー。
舞台に行く直前に塗るとなると、私の事だからテンパリまくると予測し、数日前から塗った状態で過ごしていた。
ペンを取るにも、パソコンを操作するにも、まず目に飛び込んでくる刺激的な色。
しばらく青色の爪と過ごしてみて、以前まで感じていた不快感オンリーでないと気付いた。
なんだろう、圧迫感から爪の末端に意識が行くからなのか、マニキュアというおしゃれをしている自分を視覚で逐一自覚するせいなのか。
普段の何気無いイチ所作に神経がいくような気がした。
牛乳パックを取り出す時、コーヒーカップを手に取る時、無意識的に、それに見合うような動きや形に動いていく。
自分が普段ガラの悪い座り方をしているという事にも気付いた。
マニキュアをする女の人はこんなヤンキーみたいな格好はしないだろう、と身を正す。
とても不思議な感覚であった。
そうか、世の中の女性が女性と相成っていくのは、こういった積み重ねがそうさせるというのもあるのかもしれないな。
私の知っている日常が、マニキュアを塗ったことにより非日常となった。
目に入ってくる度に、いい意味で気を散らしてくれる。
おしゃれって、すごいチカラがあるんだなあ。
なんだか新鮮な気持ちになった。
やっぱり、先入観や固定概念から、挑戦もしないでそっぽを向くのはもったいないんだなあ。
いつでもフットワーク軽く、いろんな世界に対して開けた状態でありたいなと思った。


大学時代の同期が千葉の方でネイルサロンを開業している。
たくさんの女の子の日常をキラキラさせるお仕事なのだなと、改めて尊敬した。
そもそも開業をする時点で、地面に顔を埋める勢いで尊の敬なのだが。
数年前、ネイルの勉強中だという彼女に、練習台を買って出た事があった。
仕事や育児に追われる同期の中で、一番時間に融通の利く生活であったし、単に本格的なネイルに興味があったというのもある。
だって、お高いんでしょう。
ネイルサロンって。
私の身入りを考えると、興味程度で踏み込める額ではなかった。
それを、練習といえどタダで体験させて貰えるなら、乗るしかないだろう。
我が家までわざわざ足労戴き、お礼にと八天堂の冷やしクリームパンまで用意してきてくれた。
なんて出来た人なんだ。
そんな彼女に、
「ネイルしてる間、お酒呑んでても大丈夫?」
と、初っ端アル中のような発言をする私。
だって、そんなに仲良しとかでもない旧友とおうちで2人っきりって、緊張するんだもん。
そんな私に、全然いいよー!と快くOKを出してくれた。
大学時代アトリエにウイスキーを常備し、朝からコーヒーに入れて呑んだりしていた私を知っていたから、さして驚かなかったのかもしれない。
私がグリーンラベルを呑む対面で、マニキュアや筆など、私の普段見ない道具を次々と出して、手際良く作業してゆく。
丁度今の家に越して少しの頃だから、3年前くらいだろうか。
30を目前にして、新しい技術に挑戦し生業としようとしている彼女を見て、すごいなあと思った。
何かを始めるのに歳は関係ないと言うが、いざやるとなると、やはりなかなか踏み出せないものだ。
それが食べていくための職ともなると、尚のこと。
私が酔っ払っていらんことばかりへらへら話しているうちに、爪はどんどん仕上がっていく。
ぷっくりと盛り付けた液剤を、専用のLEDライトで硬化させる。
ネイルサロンでは、大体このジェルネイルというものが主流のよう。
硬化させるだけあって、落とすのにも時間と技術が要る。
今回は練習なので、落とす所までやってもらった。
女の子は、定期的にお店に通い、高いお金を払い、この工程をやって貰っているのか。
すごすぎるわ。
超大変。
施術後は、ハンドクリームなどで指先のケアまでしてくれた。
抜かりないぜ。
練習という名のジェルネイル初体験を提供したのち、彼女は颯爽と帰っていった。
3本目の缶ビールを片手にほろ酔いの私とは、雲泥の差である。

大学在学中、ふと思い立ってドイツに1人旅に出、1ヶ月弱して戻ってきたら、学園祭真っ最中だった。
朝からウイスキーを呑んで講義に出ているような私が、学校の行事なぞ把握している筈もない。
浦島太郎気分で、あれれ〜?と右往左往しているところに、怒号が飛んできた。
例のネイルサロンの彼女が、もうとんでもなくブチ切れている。
彼女は分類するならばギャル属性であり、ただでさえ萎縮する対象なのに、それがカンッカンに怒り散らしている。
どうやら、私が自分のデスク一区画を片付けないままドイツへ行った為、展示会場となるその場を片付けてくれたそうなのだ。
普通の人のデスクならまだしも、片付けられない私のデスク。
それはもうちょっとしたゴミの城のようになっていて、あれを片付けるとなると、そりゃあお察ししますと言いたくなる有様であった。
「いい加減にしてよ!!」
と怒鳴られ、ただただ小さくなって謝るしかなかった。
思えば、あの時すでに未来は決まっていたのかもしれない。
人生でベスト3に入るキレ方をされ、もう彼女とは何があっても仲直りできないなと思った。
しかし、卒業後同期の集まりで顔を合わせるうちに、なんだかんだ元クラスメイトという立ち位置に修復された。
当時の話を出すと未だに、
「あれはマジで無かったわ。」
と声色を変えて怒りを覗かせているので、再会した際には話題に気をつけている。
そう、人生、なにがどう転がるか分からないのだ。
今日も健康なごはんを食べました。
すこーしずつ食事の量を増やしてみてはいるが、腹八分目の方が頭が冴えて色々捗るのだと気付き、残りがひとくちふたくちでもまたあとでと残すようになった。
摂取カロリー的には足りていないのだが、そもそも無職でたいして動かないのでこれくらいでも良いのかな。
病み上がりに乗じて、最低ラインを探る日々。
でも立ちくらみがすごい増えた。
この間なんて、棚の上の排水ネットを取ろうとした矢先に立ちくらみがして、数秒間痙攣を起こし、同じ棚に置いてあるボウルやらおろし器やらがドンガラガッシャーンとシンクに落ちた。
これはうっかり倒れて打ち所が悪いとあかんやつだな、とちょっとマジで危機感を覚えた。
前々から立ちくらみはあるのだが、数日間床に伏せていたせいでレベルアップした模様。
しばらくは、膝立ちしてひと息ついてから立ち上がることにしました。
痙攣って本当にびっくりするよね。
唇とか肌とかジンジンして、機械がバグるみたいにあばばばばばと身体がいうことを利かなくなる。
恐怖だわ。
ちゃんと栄養とろう。
鉄分ウエハース食べよう。
おやすみなさい。

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